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六月大歌舞伎 夜の部『月光露針路日本 風雲児たち』

六月大歌舞伎 夜の部
「三谷かぶき『月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)』風雲児たち」


0605 原作:みなもと太郎「風雲児たち」より
作・演出:三谷幸喜

大黒屋光太夫:松本幸四郎
庄蔵 / エカテリーナ:市川猿之助
新蔵:片岡愛之助
口上:尾上松也
キリル・ラックスマン / アダム・ラックスマン:八嶋智人
マリアンナ:坂東新悟
藤助:大谷廣太郎
与惣松:中村種之助
磯吉:市川染五郎
勘太郎:市川弘太郎
藤蔵:中村鶴松
幾八:尾上松之助
アレクサンドル・ベズボロドコ:市川寿猿
清七:澤村宗之助
次郎兵衛:松本錦吾
小市:市川男女蔵
アグリッピーナ:市川高麗蔵
ソフィア・イワーノヴナ:坂東竹三郎
九右衛門:坂東彌十郎
三五郎 / ポチョムキン:松本白鸚

感想遅くなりました。2回目の観劇は一階席で。
初見の時も良い本だと感じたが、改めて良く出来た脚本だと思う。

笑いも多い芝居なのだけど、凄く残酷な現実が広がっており、強い意志で立ち向かっても容赦は無い。
その辺りの緩急が見事。ラストまでの展開を知ってからこの芝居を見ると、色々と堪らくなる。

大河ドラマ「新選組!」の時も後から見返して、気付く事がたくさんあった。
例えば京に行く事が決まった時、試衛館メンバーの中の山南と藤堂の2人が「どのくらいで帰って来れるか」と明るく会話していたのとか。(京で命を落とす人に、あえてその台詞なのだろう)

人がどんどん死んでいく。いとも簡単に。

花道に近い席だったからか、二幕で弘太郎くん演じる勘太郎が氷の飲み込まれていく場面で、判っていても息を飲んだ。少し前まで普通に喋っていたのに、あっという間に目の前からいなくなる。

三幕で彌十郎さん演じる九右衛門も、元気に文句言ったり散歩したりしていたのに、その命はあっさりと失われる。
年を取ると普通に過ごしていた人が、突然具合が悪くなってしまう。凄く現実的な描き方。
ようやく日本に帰れる道が見えて来ただけに辛い。

その辺りの容赦の無さが、この脚本で好きな所でもある。

それにしてもこの話が実話というのに驚く。
もちろん大黒屋光太夫の名前は知っていたけど、言葉もろくに通じないロシア大陸を縦断し、日本へ帰国を貫く。
どれだけ意志の強い人だったのか。

芝居の中の光太夫は、何よりも仲間と共に「日本にかえる」事を思っている。

その彼が庄蔵と新蔵と共に帰るのを諦めるというのも、また残酷すぎる現実。

三人の別れの場面、初見の時は力が入りすぎていると感じた。
後日筋書を読み、一番思い入れが強い場面だったと知る。
二度目ではそこまで浮いた印象も無く、芝居全体に馴染んでいたと思う。

それにしても最後はまた辛い。
何もここに来て小市死ななくてもと思うのだけど、これも事実なのですよね。
男女蔵さんの小市が素晴らしかったので、根室を目指す船が出て来ただけで泣けてきた。

染五郎くんの磯吉が「富士山ですよ」と言う台詞が切ない。
蝦夷富士は根室沖から見えるのだろうか。

青い海と富士を見ると、北斎の神奈川沖浪裏を思い出す。

幸四郎さん、猿之助さん、愛之助さんの息のあった芝居。染五郎くんの頑張り。
「無理して歌舞伎の演出を取り入れた」感も、二度目は余り感じず、非常に入り込んで芝居を堪能した

歌舞伎の凄い所は、役者さんがみな上手いこと。
二幕で花道でみなが転びそうになる場面があるが、転び方がそれぞれのキャラクターに合わせてあり、ホントに上手い。
ギリギリ客席に落ちそうな所で止まり、近くの客にリアクションして去って行ったり、何気ない場面もとても楽しかった。

何といっても二幕の犬。あの大人数による犬は歌舞伎ならでは。

ただ歌舞伎では無く、普通に三谷さんの芝居として上演したらどうなったろうという思いも否めず。
野田さんの歌舞伎では不思議とそんな事感じた事無いのだけど。

不満は八嶋さんの起用方法。
歌舞伎に外部の人を起用するなら、出来れば他の役者ではかえがきかないくらいのポジションでいて欲しい。

八嶋さん本当に上手いし、シリアスな三幕の中、たくさん客席を沸かせてくれた。
出来れば愛のレキシアター「ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ」の時のように、もっと重要な役で見たかった。
(あの芝居は主役の山本耕史くんと、語り部的な八嶋さんがいないと、絶対成り立たない作りだった)

口上役の松也さんと役を交換しても良かったかも。
もちろん松也さんも素晴らしかったけど、三谷さんの普通の芝居だったら、三谷さん本人が口上だったかも。

色々書きましたが、芝居としては非常に良かったです。
男女蔵さん最高だったし、実は最初から新蔵は小市の事を気遣っているのですよね。
「昆布だ」と最初に言ったのも、確か新蔵だったし、細かい所までよく練られている。

翌朝、目が腫れるくらい泣いたのには、自分でもびっくり。

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