『フリー・コミティッド』
『フリー・コミティッド』
DDD青山クロスシアター
作 ベッキー・モード
翻訳 常田景子
演出 千葉哲也
出演 成河
成河さんが2時間ひとりで38役を演じる芝居。
青山クロスシアターが丁度良いサイズ感。
青山クロスシアター、行かれた事がある方はご存知でしょうが、劇場が地下で急な階段を降りなければいけないのですよね。
年取ったら行かれない劇場なので、今のうちに楽しまないと。
売れない俳優のはサムは、人気レストランの予約係をしている。
ある日職場に赴くと、同僚のボブは来ていない。電話はひたすら鳴りっぱなし。
客からもレストランからも、次から次へと理不尽な要求を受け続ける。
一人で38役、どういう事かと思ったら、サムとその大勢の電話の相手の事だ。
ただ電話の会話のみ。
でも瞬時に誰なのかわかる。凄い。
雑然としたレストランの地下の部屋。
とにかく物が多い。ちょっとした小道具を次から次へと手にし、縦横無尽に部屋を駆け回る。
ひたすら凄い。凄すぎる。
無茶振りしてくる相手とサムとの会話がとにかく面白い。
大いに笑って、成河さんの奮闘に感心しているうちに、サムに変化があらわれる。
サムは貧乏くじを引きやすいタイプなのかもしれない。
そしてこの日は、(日本的だが)サムの厄日だったのかもしれない。
誰にも献身的だったサムは、その献身を止めてしまう。
高圧的だった上司に強気に出て、仕事を放りだした同僚の弱みを握り、休暇を手に入れる。
断り続けた予約を無理矢理ねじ込み、その上客のコネクションで俳優としてのチャンスを手に入れる。
サムの人生のちょっとした変化だ。
観客から見るとサムの愛すべき性質は失われたように見える。
その皮肉な結末をどう楽しめばよいのか。
理不尽な要求などに、いちいち誠実に対応なんてしなくて良いという事が。
自分は終盤戸惑ってしまった。
何だかこの物語から迷子になった気分で終演を向かえた。
日本人の自分には理解出来ない感性の話だったのかもしれない。
それにしても成河さん、しゃべりぱなしかつ動きまくり。
特に感心したのは、あの雑然としたセットの中を、実に効率的に動くことだ。
様々な小道具を操りつつ、何役も演じ分けながら。
もちろん成河さんの天性の勘の良さもあるが、演出と役者の膨大な稽古の積み重ねだろう。
カーテンコールの最後に演出の千葉さんが紹介されて、最後列で恥ずかしそうにしていた。
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