『エドワード二世』
Try ・Angle -三人の演出家の視点- Vol.2
『エドワード二世』 新国立劇場小劇場
脚本:クリストファー・マーロウ 翻訳:河合祥一郎 演出:森新太郎
出演:柄本佑 中村中 大谷亮介 窪塚俊介
大鷹明良 木下浩之 中村彰男 西本裕行 瑳川 哲朗
石住昭彦 下総源太朗 谷田歩 石田佳央 長谷川志 安西慎太郎 小田 豊 他
血を血で洗う陰惨な権力闘争劇であるが、その争いを笑い飛ばすように軽妙に進む芝居で、非常に面白かった。
今年は私が見に行くストプレは、当たりな芝居が多くて嬉しい。
ラスト近辺は心臓の弱い人には覚悟が必要。
(以下、少々ネタバレ有)
日本では余り上演の機会の無いらしいクリストファー・マーロウの戯曲。
シェイクスピアと同時代の作家で、イギリス王家に題材を取っているが、その作風は余りにも違う。
この『エドワード二世』は、とにかく悪人しか出てこない。対立して戦争で拷問で殺害だ。
爽快なまでに自分の欲望に忠実な登場人物たちである。
登場人物も多く、内容も膨大な3時間の戯曲にも関わらず、展開はスピーディーで全く難しくない。
若くして亡くなった戯曲家なので、作品本数も少ないようだが、こんな面白い本、もっと上演して欲しい。
他の戯曲も粗筋を読む限りでは、『エドワード二世』に負けず劣らず、見終わった後の気分は最悪になりそうであるが。その辺りが日本で上演機会が少ない理由かも。
舞台は金色で塗られているが、それが権力の象徴のようにも見え、安っぽい張りぼてにも見える。
そのセットの前のブレヒト幕が効果的に使われている。
血塗られた内容でありながら、何処か滑稽で、良い意味で重苦しくなく進んでいく。演出家の手腕だろうか。
その分エドワード二世の最期の壮絶さが際立った。
本当に人間って何処まで残酷になれるのだろう…。吐き気がする程グロテスクなので、見る方も覚悟が必要。
(某新感線で上演した芝居も、似たような場面がありましたが、原作が大好きで読んでいたので覚悟して見られたのですが)
そんな大変な内容だったにも関わらず、後からじわじわと舞台の情景が蘇り、再観劇したくて堪らない。
製作陣の思う壺か?実に刺激的な芝居だった。
タイトルロールの柄本さん。男の愛人に夢中などうしようもない王様でありながら、時々鋭い所もあり、凄く良かった。
その愛人・ギャヴィストンが、ホントにクズなチンピラ。何処か良くてあんなに寵愛したのだろう。愛情は深そうでしたが。
ギャヴィストンを追放する周囲の家臣たちも強烈。皆さん上手い。
谷田さんはギャヴィストンの死後、王の寵愛を受けるスペンサー。
この舞台では、ボールドックと共に野心はあれども、王の事をきちんと想っているように見え、どうしようも無い王様ではあるのだけど、何だかエドワード二世が可哀想で…。
なので余計にあの凄惨な最期が、応えてしまったのたかも。
実際にはエドワード二世を追い詰めた、王妃の愛人・モーティマーも惨たらしく殺されているようだ。
しかし感想書いても、出てくる登場人物が潔いくらいの悪人ばかりだわ。
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