『シンベリン』感想
『シンベリン』
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
演出:蜷川幸雄
作:W.シェイクスピア
翻訳:松岡和子
出演:阿部寛 大竹しのぶ 窪塚洋介 勝村政信
浦井健治 瑳川哲朗 吉田鋼太郎 鳳蘭
上演時間三時間半、自分的にはちょっと苦手のロマンス劇ということで、かなり覚悟して行ったが、予想に反して凄い面白かった!
あらすじが何の意味もなさない。
話は無茶苦茶というか、展開がぶっ飛び過ぎて、ついていけないくらい。
なかなか上演されない訳です。
この物語をお客さんを楽しませる舞台にするのは至難の業。
荒唐無稽で怒涛のような展開を、面白くかつ上手く収めた蜷川さんの力量はやはり凄い。
もちろん演じていた濃い役者さんたちも。
以下、ネタバレ有の感想です。
そんな粗筋読んでも「?」マークしか浮かばないストーリーが、上演された芝居を見ると、すとんと入ってきます。
松井今朝子さんの感想を読んで、とても腑に落ちたのですが、確かに「歌舞伎的」な戯曲なのかもしれない。
実は上演中、窪塚洋介さんの役柄が、色悪っぽいなと感じていたもので。
浦井くんの役もですね。「実は××」でやつし。
舞台の装置も、和と洋の不思議な融合。はじまりにもきの音。
ロンドンでも上演されるようだが、この舞台がどのように見られるか、非常に興味深いです。
複雑怪奇な物語だが、案外各役者さんの役割やキャラクターは判りやすく作られている。
鳳蘭さんの王妃は典型的な悪意を持った継母だし、勝村政信さんのその息子は、絵に描いたような馬鹿息子。
しかもちゃんと完全懲悪で物語から退場。ちょっと2人が可哀そうなくらいです。
シェイクスピア作品のエッセンスが散りばめられているのも面白かった。
舌先三寸で恋を引き裂く悪人や、仮死状態になる毒薬、男装などなど。
大竹しのぶさんは年齢超越した化けっぷり。(もちろん誉めてます)
特に小姓姿が可愛かった!山賊たちが良い人すぎて、和みます。
その山賊、実は××の浦井くん、途中で仮面をつけて美声を聞かせてくれたのは浦井くんですよね?実は王子様と言われても、違和感無いのはさすがです。
悪人は死に、恋人たちは誤解も解けて、後継ぎには行方不明の王子達が帰って来るって、ご都合主義すぎるけど何故か納得されられる楽しいラストでした!
セットの背景には「一本松」です。
開演前には蜷川さんの舞台では何度か見られた手法、素の役者さんが化粧前のセットの前でくつろいでます。
ちゃんと各役者さんの名札も有り。
鏡の横に写真のようなものが貼ってあるのですが、さすがに席が後ろで判別は出来なかった。
その開演前のガウン等の姿から、役者さんが全員一列に並んで、楽屋着を一斉に引き抜くと衣装になり舞台の開始。
冒頭からラストまで、ぐいぐいと惹きつけられる、大満足な芝居でした。
写真は石井一孝さんから浦井くんへのお花。判りにくい写真で済みません。携帯変えたばかりで操作に慣れない…。
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