『獨道五十三驛』
私は猿之助十八番が大好きです。全部は見てないけれど、復活狂言としては、他の追従を許さない、脚本・構成力だと思います。
たがらこそ、もっと上演して欲しいし、澤瀉だけでは無く、歌舞伎界全体として取り上げて欲しいと思っているのですが、所詮は叶わぬ望みなのだろうな…。
『獨道五十三驛』はぜひとも再演して欲しい作品だった。弥次・喜多が狂言回しのように出てくるのもおもしろいし、何といっても化け猫の件。大詰めはこれでもか!と言わんばかりの早替わり。本当に楽しくて、大好きな演目です。
幕が開くと京都。右近さんがさすが言葉に違和感がありません。弥次・喜多は今回はその女房という設定で、笑三郎さん&春猿さん。いきなり凄いセンスの舞妓コスプレで爆笑。
序幕は京都から岡崎まで、実にテンポ良く進んでいく。物語の発端が、上手く織り込まれている。構成が素晴らしい。大体1時間半くらい、全く飽きない。
序幕の終わりは、いよいよ岡崎無量寺の場。おくらちゃんは、故・猿十郎さん、現・立師の猿四郎さんに続き、猿琉さん。いやー、台詞がしっかりしていて良かったです。
八犬伝や、お正月の国立の音羽屋さんでは、アクロバットで吹き替えを使っていたのですが、澤瀉版五十三驛は使わないのですよね。猿之助さんのこだわりかしら?
二幕以降は役者さんの力量で見せる部分が多く、猿之助さんだったらな、という思いは、申し訳無いけど消えません。
それでも芝居全体としては、とても良く出来ているし、名古屋でだけなんてもったいないです。おもしろかった!
ただ、私自身は不満の残る観劇にもなりました。
今回猿之助さん、玉三郎さんといった方がいない地方公演な為か、いまひとつ緊張感に欠ける。全体的にソツなく手順をこなしている印象で、かつて猿之助さんから受けた、熱さや、圧倒的なパワーといったものは、全く感じられなかった。
それと数人、どうにもやる気が無いように見える役者さん(友人から聞かれたのですが、ちらしに名前の載る方ではありませんので。特に右近さん、笑三郎さんは素晴らしかったです。)が目に入いり、一気に醒めました。
別にその方がやる気が無かろうが何だろうが、それは勝手ですが、そういう人が一門の中にいるのに、誰も注意しないっていうことがショックでした。芝居を作るカンパニーとして、それは終わっているでしょう。
また前日の15日に『レ・ミゼラブル』の、SP版の凄いのを見てしまったから余計…。例え芸暦は遥かに無くても、アンサンブルの一人たりとも、もの凄い真剣勝負を挑んだ舞台だったし、かつては澤瀉もそういう舞台を見せていただけに、現状が情けなかったです。
レミはまぁファンも舞台に対して厳しいからね。猿之助さんが倒れたことによる同情で、ファンも甘やかしてしまったのかな…。
今でも猿之助さんの過去創った芝居は大好きです。でも、遠征してまで見ないと思います。東京で上演していたら、一回くらいは行くとは思いますが。
もちろん芝居自体の出来は、全然悪くなかったですよ。私もそれなりには楽しかったし。ファンの方、こんな感想でごめんなさい。
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そうですね。わかります。
オモダカやさんは、やっぱりパワー。
ダイナミックに魅せるというのがテーマなのでしょうね。
それはそれで小細工がなくて新鮮な気もしますけれど、きっとそういうのも猿之助さんのキャラクターだったのかなと。
んー。
投稿: るるる | 2007年7月 3日 (火) 22時26分
るるるさん、こんばんは。
『獨道五十三驛』は大好きな演目だし、凄く楽しみにしておりました。
でも舞台上から感じるパワーが、昔とは段違いで…。猿様が倒れた直後の舞台とかは、凄かったのですがねぇ。
投稿: 花梨 | 2007年7月 4日 (水) 00時34分